企業取組紹介
2025.03.25
働きやすい職場環境の整備
採用問合せは増加し、平均年齢は30歳、10年間離職率ゼロを実現!ポイントは「人材力」の向上
有限会社高松製作所

- 住所
- 広島県福山市北匠町1-18(本社)
- 従業員(構成員)数
- 12人(内、女性 5人・外国人 0人)※2024年12月時点
- 事業内容
- 産業機械、食品機械、工作機械、ロストワックス、各種精密部品加工
ここがグリーンなポイント!
- 若手人材の確保と定着に成功し、平均年齢30.4歳、10年間離職ゼロを達成
- 残業削減や有給取得の向上により、勤めやすい職場環境と円滑なコミュニケーションを実現
- 従業員からの提案をきっかけに新工場を建設し、従業員の業務意欲向上を狙う

代表取締役 高松 信二さん
有限会社高松製作所は2014年ごろから、従業員全員で働き方に関する話し合いや、取組を行ってきました。その結果、残業時間が減少し、有給休暇の取得率も向上。働きやすい職場環境を整備したことで、平均年齢は30.4歳に、離職率は10年間ゼロになり、人材の確保・定着を実現しました。
代表取締役の高松 信二(たかまつ しんじ)さんは「人材力」の向上が働き方改革のポイントだとし、独自の人材育成に力を入れています。今では採用募集をかけずとも、入社希望の問合せがあるそうです。

代表取締役 高松 信二さん
若者の長期雇用の必要性から働き方改革をめざす
高松製作所は福山市駅家町で1977年に創業した精密機械加工を行う企業です。切削加工を得意とし、12人の従業員が働いています(2024年現在)。
「会社の将来を考えると、若者を採用し長期雇用していく必要があります。機械加工の技術者を一人前のレベルまで育てるには、5年から10年の期間が必要。しかし今後、私たちのような小さな企業では人材確保が困難になるだろうと予測していました。だから、若者が私たちに興味を持ち、さらに長く働いてもらうためには、若者にとって魅力的で働きやすい職場環境を整えなければいけないと考えたのです。」
こうして高松さんは2014年ごろから、働き方の改善と生産効率向上を進める決意をしました。

従業員が素案をデザインしたという高松製作所のロゴマーク
若い人材の定着や従業員の主体的な行動などの成果
高松製作所では働き方改革の取組の結果、従業員の平均年齢が30.4歳、10年間の離職率がゼロを実現。若者の入社・定着という成果を得ました。さらに、従業員の残業時間は年間平均で月あたり約40%も減少し、最終退勤時間も19時に。また、有給休暇の取得も増加し、一人の有給休暇取得数の平均は13日です。従業員募集をしなくても入社希望の問合せがあるという状況になりました。
また、高松製作所が進めた働き方改革は労働環境面だけではありません。人材育成にも力を入れ、高松製作所ならではのオリジナリティーある人材育成も進めました。
高松さんは「めざしたのは、従業員一人ひとりが主体的な行動ができる体制づくりです。これまで製造業は技術力が要と考えられてきましたが、これからは『人材力』が重要だと考えています」と話します。
従業員同士が上下関係のない、何でも言い合える関係性をめざした結果、今では隔たりのないコミュニケーションが高松製作所の大きな強みとなっています。「私たちがめざすコミュニケーションは『従業員同士がお互いに気を使わない関係性』です。従業員同士が円滑にコミュニケーションを取れるようになるだけで、生産性が10%上がると考えています」と高松さん。

円滑なコミュニケーションに加え、20代から役職に就かせるなどの施策もあり、各従業員が主体的に動くようになり、責任感も大きくなっているといいます。業務における生産管理はもちろん、プライベートな時間に関わる残業や休日の取り方に対しても計画を立てて自己管理。その結果、従業員が生き生きと働くようになり、メリハリのある働き方になりました。
取組の焦点は、人材力の向上や気を使わないコミュニケーション
高松さんは働き方改革を進める目標として、従業員の年収を落とさずに労働時間を削減していくことを決めました。「単に労働時間を削減するだけでなく、生産性を向上して利益を上げなければ、企業として存続できません。売上と労働時間のバランスは常に考えています。」
高松製作所では生産性向上のために最も重視しているのが人材力の向上です。働き方改革について、従業員全員と話し合いながら進めていったといいます。
また、高松さん自らが講師となって定期的に勉強会を開催。勉強会のテーマは技術面だけでなく、ものづくりの過程やコミュニケーション、税、投資、有給休暇など、社会人として必要な様々な分野にわたります。
勉強会や会議は、座談会のような形式で、従業員みんなで話をして理解を深めるようにしました。上下の立場関係なく改善点や問題点、不満に感じている部分があれば意見を言い、話し合える関係性づくりをめざしました。そのため毎年の忘年会や視察研修などの社内行事には力を入れています。参加率も高く、100%に近いそう。高松さんは「とにかく従業員を飽きさせないようにしています」と話します。
話し合える関係づくりは、役員と従業員の間でも同じです。高松さんは2年に1度くらいの間隔で各従業員と会食を行っており、役員と従業員間のコミュニケーションを取りやすくなるように工夫しているとのこと。

高松代表と従業員の方々はとても仲が良く、和気あいあいとした雰囲気
さらに、人材力向上の施策の一つとして、従業員が20代から主任やリーダーといった役職に就いています。個々が業務に裁量を持ち、自ら製造目標を設定し生産管理を行うことで生産力が向上。従業員それぞれの予定に合わせた生産計画を策定・実行することで労働時間を削減し、働きやすい職場も実現しました。
「従業員も、オリジナルの生産管理ソフトの制作に参加したことで、使いやすいだけでなく、遊び心があって操作が楽しくなるような工夫が盛り込まれた管理ソフトが生まれました。また、従業員もプログラムの基礎的な勉強も行ったので、簡単なカスタマイズは当社でできます。常に使いやすいように、自ら管理ソフトのアップグレードをしているのが強みです」。
従業員の特性に合わせた教育方法やお試し入社でミスマッチ対策
高松さんは会社で長年にわたって人材教育をし、教育の難しさを身をもって感じました。「人それぞれ意志や個性があり、性格や長所・短所も違います。だから画一的な教育方法はないですね。長年の人材教育の経験から、様々なタイプの人に合わせた柔軟な教育を行ってきました。」
まずは、指導する側の従業員への教育から始めました。その上で、指導する側が従業員一人ひとりの性格や特性に合わせた教育を実施することで、従業員の成長も格段にアップしたそうです。
人それぞれ様々なタイプがあるため、企業自体と従業員とマッチングしているかどうかも重要。そこで「お試し入社」「従業員全員で採用審査」を行っています。
入社希望者は面接だけでなく、週末など無理のないタイミングで、実際に高松製作所で作業を経験。働いてみることで、自分に合った会社や仕事かどうかを判断しやすくしています。その上で、従業員全員で入社希望者が高松製作所に合うかどうかを判断しているそうです。
多数の認定を積極的に受け、会社の認知が向上
高松製作所では気を使わない関係性・コミュニケーションを構築したことにより、従業員同士で助け合いが自然と生まれるようになりました。仕事上の問題からプライベートのトラブルまで従業員の環境変化などについて、気兼ねなく相談。それに合わせて周囲がサポートできるようになったことで、生産性の維持につながっています。
また、高松さんは従業員が長く働くためには「一生働きたいと思える会社」になることが大切だと言います。「私は小さな会社でも、社会で認められる企業に成長させたいのです。だから様々な認定を、どの会社よりも早く取得するようにしてきました。これは今までの取組の蓄積があるからだと思います。」
高松製作所がこれまで取得した認定は多数あり、経済産業大臣「事業継続力強化計画」、全国健康保険協会「ひろしま企業健康宣言 健康づくり優良事業所」、広島県「経営革新計画承認」、福山市「グリーンな企業チャレンジ宣言」「福山市SDGs推進宣言」などです。
認定を多く受けた結果、Web上や口コミによって、高松さんや高松製作所の取組が知られるようになったのです。そして、求人募集をしなくても、採用の問合せがくる状況につながりました。
「2025年3月には、福山北産業団地内に新工場が完成します。実は新工場建設のきっかけになったのは、『工場を広くした方が良いのではないか』という従業員からの提案でした。新しい職場で、従業員の仕事に対する意欲のさらなる向上を期待しています。」

高松製作所 北匠町に新設された本社工場
“小規模経営企業という強み”を最大限に活かす
高松さんは高松製作所の特徴について「うちは規模が小さい会社。規模が小さいからこそできることを最大限に活かしているのが、高松製作所の強み・魅力だと自負しています」と話します。今後の目標は強みを活かし、新しい雇用環境を実現すること。例えば、「従業員全員の現場主義・超多能工化」です。
「事務作業はデジタル化によって簡略化され、自動化できるようになりました。そんな中、生産機械のオペレーターは様々な操作をこなすので、おのずと事務作業能力も身についているというわけです。そのおかげで、オペレーターは本業の製造に注力し、空いた時間を活用して事務作業に取りかかれます。結果として事務員はゼロにできるんです。」
また、柔軟な働き方ができ、なおかつ利益を出せる環境づくりもめざしているそうです。「今後は家庭で介護の必要が出る人が多くなると予想しています。そうなると仕事をしたくても、思うように働けない人が多くなります。そこで、介護と仕事を両立しやすい企業をめざす必要性を感じるようになりました。週に3日や4日の勤務でも今と同じ収入が得られたり、夜間に仕事に従事できたりする働き方を実現したいです。」
福山エリアの複数企業と連携して生み出す相乗効果
福山エリアで複数の他社企業と連携したいという高松さん。「高松製作所には長所も短所もあります。これは他社も同じ。エリア内の企業間で連携し、お互いの短所と長所を補い合って相乗効果を生み出し、一緒に奮闘して利益を上げて成長につなげるような取組をしたいですね」と話します。
※本記事内容は2024年12月取材時の情報です。