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2025.03.25

働きやすい職場環境の整備

生産性向上を目的に始めた取組で「従業員の積極的な発言」「就職希望者増加」にも好影響

株式会社サトシゲ

働き方改革 製造業 10人以上30人未満
住所
広島県福山市南手城町3-26-5(本社)
従業員(構成員)数
27人(内、女性 4人・外国人 0人)※2024年12月時点
事業内容
木材製品の製造販売

ここがグリーンポイント!

  • DXで企業イメージは向上し、就職希望者の増加にもつながった
  • 生産性が向上し、有給休暇や公休日の取得数増加など働きやすい職場環境へ
  • デジタルツール導入により、若手とベテランが相互に学び合う、新しいコミュニケーションが生まれた

株式会社サトシゲは2019年ごろから、DXによる生産性向上に取り組んできました。DXを少しずつ進めていった結果、従業員が生産性向上に関して積極的に発言するようになったという成果がありました。

ほかにも企業イメージが向上して、同社への就職希望者が増加したことなど、多くの成果を上げています。

代表取締役社長 佐藤航平さん

人材確保が難しくなりDXによる生産性向上に活路

サトシゲは1964年に創業し、今は木材製材・木工・建材卸売を中心に事業展開する企業です。無垢木材にこだわる木材のプロフェッショナルで、近年は木材塗装・溶接などの事業も行なっています。

2024年現在、約30人が働くサトシゲですが、ここに至るまでに人材に関して苦境があったそうです。「2010年代半ばごろから人材確保の難しさを感じるようになりました」と、同社代表取締役社長 佐藤航平(さとう こうへい)さんは話します。

生産性向上に向けたDXによる取組の主な成果

そこでサトシゲでは、生産性を上げるためにDXによる取組を決断。DXは「従業員の生産性向上についての積極的な発言」「就職希望者の増加」といった成果をもたらしました。

「当時は取引先のやり取りひとつとっても、電話やファックスでした。見積書などの書類もほとんどが紙ベースだったので、書類を整理し、ファイリングしていました。また、従業員同士のスケジュールの把握も難しい状態。従業員も働きながら効率が悪いという気持ちはあったようですが、改善するところまで考えが至りませんでした。しかし、取り組んでいく中で、従業員が『変えた方がよい』と感じたことを、積極的に話せるようになったと実感しています。」

「トップダウンで行うだけでなく、従業員自らが考え、意見を言って決めていくことが重要だと感じています。業務を実際に行うのは従業員自身なのですから。本取組を通して、従業員たちは業務の必要性の取捨選択ができるようになったと思います。」

さらに佐藤さんは、今回の取組による企業イメージの向上を感じているそうです。企業イメージの向上は、採用において入社希望者の増加をもたらしました。
「求職者にとって、木材加工という業態にはどこか昔気質なイメージがあったと思います。DXへ積極的に取り組んだことによって、求職者の方々に前向きで革新的な企業だという印象を与えられたのではないでしょうか。」

タブレット端末で進捗管理ツールにある作業内容を確認しながら業務を進めます

小さなDXから始めて、少しずつ会社全体へ拡充

社内の生産性向上のため、段階的にDXを進めることにしました。

<1> 個人によるDX
2019年ごろ、まずは代表取締役である佐藤さん自身がクラウドサービスやチャットなどのデジタルツールを活用した働き方を実践することにしました。自身がデジタルツールに慣れ、業務の生産性を高める必要性を従業員に感じてもらうためです。

また、自身が使うことで、社内へ導入できるものかどうかを試す意味もあったとのこと。


<2> 従業員と情報の共有と、小さなDXを開始
デジタルツール導入後の働き方を従業員たちがイメージできるように、デジタルツールの使い方やメリットなどの情報を従業員たちへ発信。その後、少数のグループで「小さなDX」を開始しました。

有効な活用ができそうだと判断できたツールから少しずつ社内に導入し、“自身のお試し導入”から“小グループへの導入”へ移行。最初は営業や事務といった内勤メンバー6人ほどが対象でした。

クラウドによる書類管理やスケジュール共有により、各種事務業務にかかる時間の短縮を実現

<3> 全社でのDXへ
小さなDXののち、全社でのDXを実施。そして、製造現場での進捗管理等のデジタルツール導入にも踏み切りました。

内勤メンバーの小さな範囲でのDXが軌道に乗った2023年1月、全従業員にタブレット端末を配布。そして、個人メールアドレスの配布や、カレンダー・チャットの利用、クラウドによる書類管理を全従業員に対して行うことにしたのです。

製造現場へもタブレットを配布し、製造指示確認や進捗管理を行えるようにしました

人材確保が難しい現代において、生産性を上げる必要があったため、小グループでのお試し導入に始まり、最終的に全社でのDXを推進。

そうして、従業員の業務管理や、書類管理、製造工程の見える化などを実現し、これまで業務に費やしていた時間を大幅に削減できました。さらに、紙の製造指示書の内、約95%をデジタル化したことでペーパーレス化が加速。製造指示の起票もタイムリーにできるようになるなど、生産性向上にも大きく寄与したのです。

プロジェクトチームでの話し合いにより課題を見つけ、解決策を模索

「全社でのDX」を進める中で、課題も生まれました。

生産性向上に向けた取組を始める1ヶ月ほど前に、数人の従業員から成るプロジェクトチームを発足。デジタルツールを導入した際の具体的な運用ルールなどを話し合って決めるためです。すると、メンバーのみならず、所属する部署にいる従業員からもたくさんの意見や要望がありました。業務を行うときの細かいルールの作り直しや、新たなルールを決める必要があることが分かったのです。

ルールの再構築といった課題に対して、メンバーで運用ルール一つひとつを丁寧に議論していったそうです。このように全員でルールを決めるようにしたことで課題を解決し、生産性向上に向けたDXを進めていきました。

生産性向上による多数の成果

もともと、生産性を上げる目的で始めた取組でしたが、「従業員が働き方について積極的に発信するようになった」「アナログな業務を一新したことで企業イメージが向上し、入社希望者が増加した」など目的以外の成果がありました。佐藤さんは、ほかにも多くの収穫があったと話します。


<有給休暇などの各種休暇の取得数や、公休日の増加>
「DXによる生産性向上の取組により、生産性を維持したまま有給休暇や介護休暇・看護休暇の取得数が増えました。さらに、従業員の公休日数を増やしても生産性を維持できるようになったことで、現在では取組前と比べ、15日も増やすことができました。」

<会社全体にかかる業務効率の向上>
また、経理等の各種事務業務にかかる時間の短縮も可能にしました。これによって事務職が営業職をサポートできるようになり、営業職の負担が軽減。そうして負担の減った営業職が製造現場をサポートできます。その結果、各従業員が複数の部署のノウハウを持てるようになり、会社全体で業務の効率化につながりました。

<従業員の年代を問わず活性化された新しい形のコミュニケーション>
また、DXに伴う各種デジタルツールの導入により、普段とは違う新しいコミュニケーションが生まれたと言います。作業・技術のノウハウはベテランが若手を指導し、デジタルツールのノウハウは若手がベテランに教えるという、ベテランと若手が双方教え合う姿が見られるようになったのです。世代を超えたフラットな関係性の構築が実現できました。

製造工場の様子

従業員それぞれが活躍できる会社をめざして

「DXによる生産性向上の取組を通じて、『多様性の社会の中で様々な人が活躍できる場所をつくることも、経営者の一つの役目』だと考えるきっかけになった」と佐藤さんは話します。

また、女性や外国人の方々が活躍できる会社づくりを実践していきたい、従業員が経営者と同じように事業の話ができるくらいに、従業員それぞれが活躍できる会社にしていきたいとの思いのもと、「これからもサトシゲは良いモノ、良いサービスを追求し、お客様から『ありがとう』と感謝していただける企業をめざします」との意気込みをいただきました。

行政の補助金を活用した働き方改革

行政による補助金などのサポートは、事業の計画などを立てて提出し、採択される必要はありますが、新しい取組を始めたり、思い切ったことに挑戦できたりすることが大きな魅力です。

サトシゲでは、DXに必要な経費の一部に行政の補助金を利用しています。

「行政によるサポートはとてもありがたく、導入する企業も安心して取り組めます。また、補助金申請が採択されると、立てた計画を実行しなければなりません。だからサポートを受けたい企業は、本気で取り組むのだと思います。これも補助金のメリットだと感じていますね。」

※本記事内容は2024年12月取材時の情報です。