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2025.03.25

女性・障がい者・高齢者等の雇用

障がい者雇用を進める中、社員同士が支え合い、結果として全社員が働きやすい環境を実現

有限会社三福林

障がい者雇用 製造業 30人以上50人未満
住所
広島県福山市曙町3丁目2番24号
従業員(構成員)数
36人(内、女性 26人・障がい者 4人・高齢者 12人)※2024年12月時点
事業内容
給食弁当製造・販売業

ここがグリーンポイント!

  • 障がい者雇用により社員同士が支え合い、社内コミュニケーションが活性化
  • 個別指導で社員のスキルが向上し、退職希望者が減少
  • 障がい者雇用と、障がいに関する勉強を繰り返し行うことで多様性ある企業文化をさらに強化



有限会社三福林は、福山市エリアを中心に、味や鮮度、健康面を重視した手作りのお弁当を提供している企業です。

代表取締役社長の田川 富生(たがわ とみお)さんは、2008年ごろから聴覚障がいのある方や特別支援学校の実習生など、多様な人材の受け入れを進めてきました。

こうした障がい者雇用を軸とする取組によって、社内の雰囲気が大きく向上し、労働時間の短縮や退職希望者減少などの成果も得られました。

「今後も多様な人材を受け入れる取組をさらに強化し、地域社会に貢献していきたい」と、田川さん。

代表取締役社長の田川 富生(たがわ とみお)さん

障がい者雇用のきっかけはハローワークからの紹介

最初に聴覚障がいを持つ方を採用したきっかけは、ハローワークからの紹介でした。「聴覚の障がいを持っていましたが、口の動きを見て言葉を読むことができ、コミュニケーションもスムーズにできる方だったので問題ありませんでした」と語ります。

採用後は、仕事の進め方にも大きな支障がなく、同僚からも頼りにされる存在へと成長。さらに、聴覚障がいを持つ社員に後輩をつけるために特別支援学校の実習生を受け入れ始めたことで、より多様な働き方を実現する土台が整っていきました。

「後輩が入社することで責任感が出てきたり、アドバイスをしたりするようになって、成長してくれています。」

多様な人材の受け入れによる取組の主な成果

障がいのある方の働きやすさを追求する中で、新たな障がい者実習生を受け入れるための体制が整い、現場の社員たちには「できる中でやろう」「一緒になってできるようになっていこう」という協調意識が芽生えました。

特に先輩となる聴覚障がいを持つ社員が後輩実習生をフォローし、新しい技術や作業方法を丁寧に伝えている点は大きな特徴です。
こうした取組が社内コミュニケーションの活性化につながり、社員同士が互いの立場を理解し合う風土が醸成されています。

結果として、互いを支える文化が根づきやすくなり、各自が自分に合ったスピードや手順で成長を重ねることで、全体の作業効率も着実に向上しているといえます。

一人ひとりの特性を踏まえた指導で課題を解決

支援学校の実習生受け入れや、障がい者雇用の取組を進める上での課題としては、障がいの特性に応じたコミュニケーションや作業指示を行う必要があることが挙げられます。
こうした個別対応を円滑に行うため、指導者同士で定期的に情報共有を行いながら、実習生それぞれの進捗や課題を把握。

一人ひとりの成長度合いや性格に合わせて、作業量の調整やアドバイスの仕方を次のように工夫しています。


<お弁当容器の洗浄作業>
まず、お弁当容器の解体作業を行います。蓋や仕切りを分けた後、食器洗浄機に入れられる状態にまとめていきます。
食器洗浄機への挿入作業では、機械操作の手順を一つひとつ説明し、最初は担当者と一緒に確認しながら進めます。

<手洗い、制服の着用>
手洗いや、制服の正しい着用ができるようにサポートを行います。

<衛生管理の徹底と職場ルールの習得>
弁当製造業では清潔さが重要なため、最初に正しい手洗い方法と制服着用を徹底的に教えます。
制服の扱いや身だしなみのチェックを行うことで、将来的に別の工程に移る際にも役立つ基本的な衛生観念が身につくようサポートしています。

お弁当製造後の使用備品清掃も行います

<スキルアップとコミュニケーション>
単純作業だけでなく難易度の高い工程にも順次チャレンジしてもらうことで、仕事の幅を広げています。聴覚障がいを持っている社員には筆談やジェスチャーを使いながら具体的に指示を出します。

社員同士の報連相で互いをサポートし合いながら関係性を築きます

取組を通して活気ある職場になり、退職希望者が減少

これまでの取組を重ねる中で、社内には互いをサポートし合う風土が育まれ、社員の責任感や成長意欲が高まってきました。
特性の異なる人同士が働くことで自然とコミュニケーションや作業手順を見直す機会が増え、「責任感が出てきたり、アドバイスをするようになったりと成長してくれている」という声も挙がっています。

そうした変化の結果、「社内の人間関係が良好になった。また、退職希望者が減った」という成果につながりました。
単なる労働力の確保にとどまらず、組織全体の連携意識とモチベーションを高め、より活気ある職場へと進化しているといえます。

社員同士の報連相で互いをサポートし合いながら関係性を築きます

今後も障がい者雇用を継続していきたい

田川さんは「障がい者雇用を継続することと、障がいに関する勉強を繰り返し行っていく」と述べ、多様性を受け止められる企業文化をさらに強化していく考えです。職場のルールづくりや作業手順のマニュアル整備なども進め、実習生を含めた全スタッフが安心して作業に集中できる環境を拡充する予定です。

多様性のある職場環境で生き生きと働けるからこそ、活気ある現場に

これからも安心して働ける環境づくりをさらに推進

有限会社三福林の取組は、障がいを持つ方の受け入れを軸に、多様な人材が相互に助け合い成長できる職場づくりを進めている点が特徴的です。個々の特性に応じたコミュニケーションや衛生管理の徹底、段階的なスキルアップ指導など、きめ細やかな工夫を重ねることで、生産性向上と定着率アップの両面を実現してきました。今後も学びを深めながら、誰もが安心して働ける環境づくりをさらに推進し、多様性を受け入れる企業として活躍していきます。

功を奏したのは、広島県中小企業家同友会福山支部の委員会活動

有限会社三福林では、広島県中小企業家同友会福山支部の委員会活動を通じて、障がいに関する勉強会や特別支援学校卒業生向けのフォロー研修などを実施しています。こうした外部との連携が、社内の教育体制や理解の促進において大きな助けとなっています。

また、特別支援学校の学生の受け入れにあたっては、「東部地域障害者就業・生活支援センター」のサポートを受けています。
「人を生かす経営ですべての人に幸せを 共に生きる地域づくりフォーラム2024(広島)」にて

※本記事内容は2024年12月取材時の情報です。