企業取組紹介
2025.04.03
環境に配慮した取組
脱炭素の取組で、学生やステークホルダーから選ばれ続ける企業へ
シンワ株式会社

- 住所
- 広島県福山市神辺町平野903-2
- 従業員(構成員)数
- 116人(内、女性 22人・外国人 18人)※2025年1月時点
- 事業内容
- PPフィラーを主としたプラスチックシートからプラスチック食品容器の一貫製造
ここがグリーンなポイント!
- 温室効果ガス排出量の削減目標設定と取組の実施で国際認証「SBT認証」を取得
- 従業員のエネルギーに対する意識が向上し、節電などコスト削減に
- 脱炭素に向けた取組と働きやすい環境の整備で、企業価値を上げながら人材確保

シンワ株式会社は1988年に創業。関連会社の信和プラスチック株式会社と共に福山市神辺町に本社を置き、プラスチック製造、プラスチック食品容器の成形、プラスチックのリサイクル、コンパウンド原料製造を主軸に事業を展開しています。
同社では、社会課題である脱炭素など温暖化対策への取組が企業にとっても喫緊の課題だと認識し、2023年から温室効果ガスの排出量削減に向けた取組を始めました。事業柄、温室効果ガス排出源の大半がエネルギー関連だと把握している中で算定した結果、電力が占める割合が圧倒的に大きいと再認識。
主要な工場に太陽光パネルを設置するほか、社用車にハイブリッドカーを導入、電動式フォークリフトの使用、LED照明の設置といった、節電を中心とした対策を実施しています。国際認証であるSBT認証(中小企業版)を取得し、「2030年までに温室効果ガス排出量4割削減」という目標の達成をめざしています。

食品容器や包装材のプラスチック成形の様子
電気料金高騰を受け、エコを追及する取組が加速
2018年ごろから国内でSDGsの活動が急速に重視されるようになったことで、社会課題である脱炭素に向けた取組は、企業にとっても重要課題であると認識するようになりました。その後、電気料金が高騰してコストが増加。これが契機となり、2023年ごろから脱炭素への取組が一気に加速していきました。
また、総務部 課長 川原さんによると、近年、新卒採用においてリサイクルや環境に関する取組への関心が高い学生が多くなってきているそうです。どの企業も新卒採用が厳しくなってきていることから、リサイクル事業に加えて脱炭素の取組を行うことで、自社の魅力を高めるという狙いもありました。

総務部 課長 川原さん
さらに、「当社ではプラスチックのリサイクル事業もしています。プラスチックを再びプラスチック製品として生まれ変わらせるのは地球環境にやさしい取組です。しかし、再生する工程にもエネルギーが必要。一からプラスチック製品をつくるのと同じぐらいかかるのです。エコな取組をしている以上、再生工程で少しでも省エネを行い、よりエコになるよう追及したいという思いもありました」と川原さんは語ります。
各部門が製造機械ごとの使用電力を把握し節電意識が向上
同社の製造現場では脱炭素に向けた取組として、各部門の管理者が毎月の使用電力の数値を把握しています。その結果、各部門の従業員が製造機械ごとの使用電力まで意識して仕事をするなど、省エネ・節電への意欲が高まったという効果が得られました。
「脱炭素の取組を始める際、従業員が省エネ・節電の取組について受け入れてくれるのか心配でした。しかし、従業員の各家庭でも電気料金高騰の影響を受けていることから、節電の意識が自然と生まれたようです。省エネ・節電の取組はスムーズに受け入れてもらえました。」

プラスチックのリサイクル処理工程の様子(信和プラスチック)
現在の温室効果ガス排出量を算定し2030年までの削減目標を設定
脱炭素に向けた取組は、銀行の脱炭素コンサルティング営業部の協力を得ながら進めていきました。
2023年10月から、GHGプロトコルという温室効果ガス排出量算定の国際基準に基づいて、シンワグループ企業の本社・工場・倉庫などすべての拠点を対象に温室効果ガス排出量の算定を開始しました。
2024年1月に算定完了。この算定した年間排出量を2030年までに4割削減することを目標とした上で「年間排出量」と「削減目標」をもってSBT※1に申請。設定した削減目標について、同年5月にSBT認証※2(中小企業版)を取得しました。
※1 SBT…パリ協定が求める水準と整合した、企業が設定する温室効果ガス排出削減目標のこと
※2 SBT認証…企業がパリ協定に沿った温室効果ガス排出削減目標を設定していることを示す国際認証

プラスチックシートの製造の様子
プラスチック製造関連の事業を主軸とする同社では、温室効果ガス排出源のうち、圧倒的に電気が多いという特徴があります。そのため、いかに電気使用量を削減できるかが取組の大きなポイントになりました。
そこで、太陽光発電事業も行う銀行の協力のもと、設置可能な工場の屋根に太陽光パネルの設置計画を進めています。
電力の発生源が太陽光なので、石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料から作られた電力よりも環境にやさしいのが特徴です。また、太陽光で発生した電力を銀行から購入することとなり、電力会社から購入するよりも料金が下がるため、電気料金高騰への対策としても有効なのです。
ほかにも、照明のLED化や一部の車をハイブリッドカーにしています。
煩雑な作業を経たことで、課題を再認識
実際に脱炭素の取組を行なっていく中で一番大変だったのは、SBT認証手続のためのデータ算出の煩雑さだと、川原さんはいいます。申請入力フォームには様々な数値を打ち込む項目が複数あります。電気やガスは事業所単位なので数カ所ですが、ガソリンや軽油は車両ごとにすべてチェックして合計を入力します。
その作業を通じて温室効果ガスの排出源には、電気・ガス・ガソリン・軽油・灯油など多くの種類があること、そして、電気の使用比率が圧倒的に高いことを再認識。節電が最重要課題であることが分かったのです。
有給休暇取得率向上や再雇用によって企業の総合的な魅力を底上げ
脱炭素の取組と並行し、魅力的な職場づくりとして有給休暇の取得率向上や、定年者の再雇用促進という取組も実施しています。
現在、企業には従業員に年間5日以上の有給休暇を取得させる義務があります。同社ではこの制度ができるよりも前から、ほとんどの従業員が年間5日以上の有給休暇を取得していました。有給休暇を取りやすい雰囲気ができあがっており、従業員は有給休暇を理由やタイミングを問わず自由に活用しています。
川原さん「脱炭素の取組と、エコ意識に加え、有給休暇取得など働きやすさの向上によって、総合的な面で会社の魅力を上げていきたいです。そして、会社の魅力を上げることで人材確保につなげていき、持続可能な企業にしたいと思います。」

シンワ 成形第二工場(太陽光発電設備設置予定工場)
脱炭素の取組と働きやすさ向上で企業価値を高める
中小企業向けSBTの目標期限は2030年です。川原さんは引き続き、温室効果ガスの削減に努め、2030年までにSBT申請時に算定した年間温室効果ガス排出量の4割削減をめざすと話します。
「当社の経営理念は『信頼・調和・未来』。脱炭素の取組はこの理念に合致するテーマであり、これからも会社として力を入れていくテーマです。地域や取引先といったステークホルダーから選ばれる企業をめざし、企業価値を高めていくための取組を続けていきます。そして、人材の確保へつなげていきたいですね。」

福山エリアの複数企業と連携して生み出した相乗効果
銀行の脱炭素コンサルティング営業部の支援は、本取組において、とても大きな助けとなりました。例えば、SBT認証申請。申請先であるSBT事務局は英語対応だったため、銀行のコンサルタントが翻訳するなどサポートしてくれたことで、スムーズに進められました。外部の専門の方と協力して取り組んだのは大きなプラスになったと思います。
※本記事内容は2025年1月取材時の情報です。