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企業取組紹介

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2025.04.03

働きやすい職場環境の整備

社員が楽しめる取組で社員のモチベーションと企業イメージがアップ!特定保健指導の受診率は10%未満→90%以上に向上

福山熱煉工業株式会社

健康経営 製造業 300人以上
住所
広島県福山市箕島町6280-1(本社)
従業員(構成員)数
431人(内、女性 77人・外国人 16人)※2025年3月時点
事業内容
金属熱処理加工、研磨

ここがグリーンなポイント!

  • 健康経営のきっかけはトップダウンではなく、社員からの提案
  • オリジナル体操を考案して社員が楽しみながら続けやすい取組を継続
  • 健康経営優良法人「ブライト500」取得で社員のモチベーションと会社のイメージ向上




福山熱煉工業株式会社は1965年創業の金属熱処理加工の専門のメーカーです。自動車や航空機など幅広い分野の金属部品に同社の熱処理技術が活用されるなど約60年にわたり、各種産業機械や製品の安全性と耐久性の向上に貢献し、日本の製造業を支えています。

同社では社員一人ひとりが企業の社会的責任の重要性を自覚した企業活動を実践していくために、社員の健康意識を高めようと、従業員の健康維持・増進に向けた取組を社内外に発信する「健康経営宣言」を策定し、健康経営プロジェクトをスタート。

第2生産課の岡田 孝(おかだ たかし)さん、品質管理課の小林 弘幸(こばやし ひろゆき)さん、そして、代表取締役社長の河田 一実(かわた かずみ)社長を中心に、オリジナル体操や健康に配慮した残業食、分煙スペースの整備など全社的な取組を進めてきました。

左:第2生産課 岡田 孝さん 中央:代表取締役 社長 河田 一実さん 右:品質管理課 小林 弘幸さん

特定保健指導の受診率が10%を下回ったことで一念発起

健康経営プロジェクトを始める最初のきっかけは、2020年ごろ、健康診断をもとにした「特定保健指導」対象者の受診率が10%を下回っていたことでした。

当時、社内で安全衛生委員会の活動が活発になっていたこともあり、これを問題視した安全衛生委員会の岡田さんと小林さんが有志メンバーとともに、社員の健康意識を高めようと社長へ直訴。社長からはすぐに快諾を得て2020年11月、「健康経営宣言」の策定に乗り出しました。

具体的には、全国健康保険協会広島支部による「ひろしま企業健康宣言」、福山市による「SDGs推進宣言」といった取組に賛同し、自社ホームページなどで健康課題の把握や改善、健康づくりへ取り組むことを社内外へ発信。

そうして、特定保健指導の受診率を上げて従業員の健康意識を高めるために、男女社員を含む各工場の安全衛生メンバーを主体とした健康経営プロジェクトを始動させていったのです。

2か月に一度のプロジェクト会議を通じ、国内6拠点全ての工場で足並みを揃えながら健康経営の取組を進めていきました。

プロジェクト始動当時を振り返り「驚きましたね、それまで社員からの提案はなかったので。提案内容も前向きで費用もかからないので、ノーと言う理由がないと思いました」と河田社長。

社員の健康意識が高いことで多くの企業メリットが得られます。例えば、社員の健康が保たれることで供給が安定したり、生産性が向上したりします。また、生活習慣病の発症リスクを減らして、元気で長期的に活躍してもらえます。さらに、健康経営の推進・実現により、社員や顧客、取引先などステークホルダーへの企業イメージアップも図れるのです。

代表取締役 社長 河田 一実さん

「いかに興味がない人をやる気にさせるか」を重視した取組

健康経営プロジェクトを軌道に乗せるにあたり、「いかに興味がない人をやる気にさせるか」という視点を重視しました。「取組に楽しく参加していたら、結果的に健康になった」というスタンスをめざして次のような取組を中心にプロジェクトを展開。

<朝礼時にオリジナルの「ネツレン体操」を考案・導入>
ヘルスケアトレーナー監修のストレッチ6種を取り入れた独自の「ネツレン体操」を考案。朝礼時に全社員で取り組んでいます。

事務職や製造職など制服が異なる社員全員が取り組みやすいよう、体操時間を短く抑え、明るい音楽を流すなどの工夫を施しました。

「ネツレン体操」を実践している朝礼時の様子

<残業食の内容見直し、自販機近くに健康情報を掲示>
従来の残業食ではジュース・菓子パン・カップラーメンなどを配布していましたが、低カロリーで健康的な食品へと変更。最初に“楽しい”があっても、続けていったその先に健康意識が高まるようにという工夫です。

さらに、自販機付近に「100kcalの目安」「飲料に含まれる角砂糖の数」を示すポスターを掲示することで、社員が自主的に健康への配慮ができる環境を整えました。

健康に配慮した残業食の一例

<分煙スペースの整備>
喫煙者と非喫煙者の両方が快適に過ごせるよう、JT(日本たばこ産業)のコンサルを活用して分煙化を推進。喫煙エリアを区切るだけでなく、健康についての意識啓発にもつなげています。

社員の健康意識も企業イメージも飛躍的に向上

健康経営プロジェクトを始めてからの様々な取組により、社員の健康意識は大きく向上。次のような成果を得ることができました。

<特定保健指導の対象者数減少と受診率向上>
特定保健指導の対象者数は約15%減少し、プロジェクトを始動させた当初の目的であった受診率は、10%未満から90%以上へと飛躍的に向上しました。

<柔軟性・平衡性の数値上昇で転倒リスク軽減に>
2024年度の体力測定で転倒リスクに関わる柔軟性・平衡性の数値が改善。結果として身体の柔軟性が増し、作業効率や安全性も向上しているといいます。

<社員のモチベーションや企業イメージがアップ>
同社の取組が新聞・経済誌・テレビ・ラジオで取り上げられたことで、社員のモチベーション向上や会社のイメージアップにもつながりました。

特筆すべきは健康経営優良法人「ブライト500」に3年連続認定(2025年3月時点)されたことです。
経済産業省の「健康経営優良法人」に認定された企業の中でも、特に優れた取組を行なっている500社のみに与えられる健康経営優良法人「ブライト500」の認定を受けました。

健康経営プロジェクトを始動させた当時、取り組むからには高い目標を立てようと、めざしていた「ブライト500」の認定を実現させたのです。

今後、歯科医師会との連携を進めつつ、福山市の製造業のトップランナーとして地域発信に努めたい

来年度は歯の健康にも焦点を当てようと、現在、地元歯科医師会との連携を検討中です。歯科医師を招いての健康講座や検診、ブラッシング指導などを取り入れ、楽しみながら歯の健康を守る取組を進める予定とのことです。

「歯を大切にして美味しく食べることが、全身の健康維持につながる。福山市の製造業トップランナーとして、地域にも発信していきたい。」

第2生産課 岡田 孝さん

外部団体との協力と補助金活用で取組をさらに拡大

健康経営の推進にあたっては、中国労働衛生協会と健康経営プロジェクトの取組について提携し、体力測定やメンタルヘルス面談をサポートしてもらいました。

分煙化にはJTが協力し、専門コンサルを受けることで効率的に環境整備を実施。

資金面では、日本労働安全衛生コンサルタント会や厚生労働省エイジフレンドリー間接補助金(60歳以上を対象)などを活用し、持続的に取組を続けられる体制を整えています。


※本記事内容は2025年3月取材時の情報です。