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2025.04.09

環境に配慮した取組

副資材開発でマテリアルリサイクルを実現し、CO2は大幅削減、ブランド力と社員意欲は大幅アップ

株式会社エコログ・リサイクリング・ジャパン

アップサイクル・リサイクル 製造業 10人未満
住所
広島県福山市草戸町3丁目11番8号(本社)
従業員(構成員)数
9人(内、女性 4人中、外国人 2人) ※2025年2月時点
事業内容
エコログ・リサイクリング・ネットワークの運営

ここがグリーンなポイント!

  • ポリエステル製の副資材開発により、衣料品のマテリアルリサイクルを実現
  • 廃棄物処理(焼却処分)と比較して約90%のCO2削減効果
  • ネットワーク会員約40社の参画により全国規模での回収・再資源化を推進



株式会社エコログ・リサイクリング・ジャパンは、不要になった衣料品等の繊維製品を回収し、独自のネットワークを通じて、廃棄物を新しい製品の原料として再利用する「マテリアルリサイクル」に取り組んでいます。

廃棄物を焼却処分する方法と比べて約90%ものCO2を削減でき、廃棄物焼却のエネルギーを発電や暖房などに利用するサーマルリサイクルと比べても約85%削減。化学分解した廃棄物原料を再利用するケミカルリサイクルと比べても約80%の削減が可能です。

このような環境への高い効果は、ポリエステル製の副資材を開発・使用している点が大きな要因になっており、幅広い企業との連携やネットワークづくりを通して、環境配慮型のビジネスモデルを日本全国に展開しています。

取締役副社長 田邉 和男(たなべ かずお)さんに取組と成果、今後の目標などをうかがいました。

取締役 副社長 田邉 和男さん

ヨーロッパ視察をきっかけに日本の将来をいち早く予見し、取組をスタート

1992年、同社の母体である株式会社ワッツの先代社長であり創業者は、着古された多くの衣類が廃棄されていることを、自社のライフサイクル調査で知り、「将来、メーカーとして自分たちが作った製品に最後まで責任を持つ時代が来るのではないか」と予測。そんな未来に対応するべきとの考えを持っていました。

翌1993年、ヨーロッパ市場調査で耳にした、ドイツの衣料品をリサイクルしている会社を視察。リサイクル事例を参考にして日本にも同様のシステムを導入すると決意したのです。

そこから回収システムやポリエステル製のボタンやファスナーなどの副資材開発といったテーマが自社内で浮上し、本格的に事業化へと動き出しました。

ヨーロッパ視察の際の写真(当時)

先駆けてポリエステル製副資材の開発とリサイクルネットワークを構築できたことが成果

1994年には、資本金3,000万円でのスタートを経て、東レや伊藤忠商事など大手企業からも出資を受け、資本金は12,000万円まで増資されました。そのおかげもあり、ポリエステル製のボタンやファスナーなどを開発するためにYKK、アイリスなど複数のメーカーにも協力を依頼し、約2年かけてリサイクル可能なエコログ副資材の開発を実現。ポリエステル製の回収衣料をペレットと呼ばれる細かな粒にし、ボタンや芯地といった衣料品の副資材に再生します。

アパレル関連の伊藤忠商事、東レ、アイリス等大手企業が参画したことで営業面の後押しが進み、多数のユニフォームメーカーがネットワーク会員として加わる結果につながりました。

難航する副資材開発に、輸入した実物の副資材と粘り強さで交渉成立!

副資材メーカーからは「ポリエステル単一素材だけでは品質基準を満たせない」と難色を示されたこともありましたが、当時ヨーロッパで先行していたポリエステル製の副資材を提示し、粘り強く交渉した末に開発がスタート。

最終的に基準を満たす副資材、エコログファスナーの開発を実現

こうして誕生したエコログ・リサイクリング・ネットワークの副資材を用いた衣料品を実際に作るメーカーに声をかけ、回収ルートも整備し、2000年には全国約40社が参画するリサイクルネットワークを構築できました。

さらに1999年以降、経済産業省や広島県、福山市の支援を受けながら繊維リサイクル実証施設を整備し、全国初の繊維リサイクルプラント運用を開始しています。

大手や複数の企業との連携で社員のモチベーションが高まる

各社への営業を担当するのは出資企業の担当社員およびエコログ社員です。

田邉さん「有名企業との連携が増え、誰もが知っている企業と協業できることで社員のやる気が高まっています。」

日本一の繊維製品マテリアルリサイクル企業をめざす

同社は「日本一の繊維製品マテリアルリサイクル企業」「サーキュラーエコノミーの実現」をめざしています。
さらなるネットワークの拡大だけでなく、産業資材など新たな分野でのリサイクルにも積極的に取り組む方針です。

また、地元備後地域での展開はまだ十分ではないと感じており、地元企業に参画してもらいながら地域密着型の循環モデルを拡充させたい考えです。

防音材としても利用できるリサイクル素材

マテリアルリサイクル推進で循環型社会の一翼を担う

同社は、ヨーロッパの先行事例をもとにポリエステル製副資材の開発とリサイクルネットワークの確立を進め、国内外の企業や行政、外部団体との連携を深めてきました。

徹底したマテリアルリサイクルによりCO2削減効果を生み出すだけでなく、企業ブランドの向上と社員のモチベーションアップにも寄与しています。

今後も全国各地の企業の参画を推進し、より持続可能な循環型社会の一翼を担っていくことをめざしていきます。

左は同社代表取締役の和田顕男さん

リサイクル施設の整備に行政の補助制度を活用

同社の繊維リサイクル実証施設やアルコール製造研究施設、そして「びんごエコタウン構想」による繊維リサイクル施設などは、経済産業省や広島県、福山市の補助金を活用して整備されました。

自己資金だけでは難しい大規模設備の導入に、行政支援を受けることで早期実現が可能になりました。

※本記事内容は2025年2月取材時の情報です。