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2025.04.10

女性・障がい者・高齢者等の雇用

多様な人財活用で人財不足を解決し、人事制度の改革で従業員のモチベーションを向上

備後漬物株式会社

外国人雇用 製造業 300人以上
住所
広島県福山市駅家町大字法成寺1613-47
従業員(構成員)数
343人(内、女性 188人・外国人 67人)※2025年3月時点
事業内容
漬物の製造販売/外食事業

ここがグリーンなポイント!

  • 外国人財の管理職登用など年齢や国籍を問わない多様な人財を活用
  • 個々の能力や成果に基づく人事制度の改革で従業員の業務意欲が向上
  • 外国人従業員をサポートする専門組織を設置し、日本語や文化の理解、意欲向上を促進

備後漬物株式会社では、多様な人財が活躍できる会社づくりを行うことで人財不足に対応。外国人技能実習生の受け入れ拡大や、一般採用した外国人財の管理職登用も行いました。

また、人事制度の見直しにも着手。年功序列色が濃い人事制度を見直し、個々の能力や実績・向上心などが反映される制度にしました。年功序列による社内の給与格差の是正をもって従業員のモチベーション向上を図っています。

年齢・性別・国籍問わず多様な人財の活躍で採用増へ

同社は、1946年に福山市で創業した食品メーカーです。キムチや浅漬けをはじめとする漬物を主力商品として全国展開しています。

近年は、全国的にも問題となっている人口減少や少子高齢化による採用難、人財定着率の悪化、従業員の高齢化などといった雇用に関する諸課題に対応すべく、多様な人財が活躍できる会社づくりを推進。

2030年に向けて掲げた、長期ビジョンを達成するためにも人財強化が必須であり、多様性のある会社こそ厳しい事業環境を乗り切っていけるという考えのもと、年齢や性別、国籍を問わない人財を採用し、すべての従業員が働きやすい職場環境をめざしたのです。

左:ビジネスサポート本部 国際人財育成強化室 ブイ・チャン・チュイ・ティエン 室長/右:経営戦略本部長・海外事業責任者 取締役 西澤 道夫(にしざわ みちお)副社長

外国人財の管理職登用や人事制度の見直しで従業員の業務意欲が向上

外国人財の積極活用をはじめ、2020年からの3年間は、評価やパート社員からの社員登用制度などの改革を推し進めてきました。この人事制度改革の取組には、従業員の意識改革・意欲向上という狙いもあったのです。

<人財難を解決>
2015年に一般採用で入社したベトナム出身のブイ・チャン・ティエンさんを2023年に管理職へ登用。技能実習生のマネジメント全般を担当し、外国人財の受け入れを増やしています。

そして、2024年に外国人財2人(ベトナム・韓国 出身)を一般採用。2025年にはベトナム出身者一人が入社予定など2年続けて外国籍の新卒従業員を採用しました。また、2025年3月現在、ベトナムからの技能実習生を約70人受け入れています。

ベトナム出身のブイ室長は寺院などの日本文化に関心があったことに加え、日本人の勤勉さに感銘を受けたことがきっかけで、来日を志したと話します

<意欲向上へと波及>
女性で外国籍のブイさんを管理職に登用したことは、性別や国籍を問わず活躍できる環境であることの証となり、従業員に大きな刺激を与えています。外国出身の従業員の目標となり、やる気醸成につながりました。

さらに人事制度の見直し・改善の実施によって個々の評価が加味されるようになり、社内の給与格差が是正。従業員だけでなく、技能実習生にも専用人事制度が定められているため、能力や努力が給与に反映され、従業員や実習生の意欲向上に大きく寄与しました。

取締役副社長・経営戦略本部長・海外事業責任者 西澤 道夫(にしざわ みちお)さん「以前は年功序列色の濃い人事制度であったことから、中途採用者が不利になったり、管理職よりも年配の一般職の給与が高かったりする問題がありました。この問題を人事制度改革が解決したことに加え、従業員や実習生のやる気を引き上げたことも大きな成果といえます。」

「食の多様化や食材の価格高騰などの厳しい局面を乗り切るには、多彩な従業員が生き生きと活躍できる会社づくりが不可欠」と話す西澤副社長

外国人従業員をサポートする専門部署の設置や人事制度改革で、従業員の意欲向上をめざす

リモートを活用しながら行われる会議の様子

2015年ごろ、おもに中国からの技能実習生を受け入れ始めていたのですが、同年にベトナム出身のブイさんが一般採用で入社したことをきっかけに、ベトナムからの技能実習生の受け入れに移行。ベトナム語を話すことができ、ベトナム文化に理解のあるブイさんの力が活かせるからです。

そして、ブイさんを中心に日本人3人と外国人3人で構成した「国際人財育成強化室」を設置しました。ベトナム人実習生をはじめ、他国籍の特定技能外国人や派遣労働者への日本語教育、その他のスキルアップ支援を推進する外国人財の活用を図る専門組織です。

例えば、日本語のスキルアップ支援では技能実習生を対象に、ブイさんや外部から招いた専門講師による日本語勉強会を実施しています。

人事制度改革では、評価体制や従業員の昇格基準の見直しと昇格試験制度、基本給のレンジ制の導入などを実施。これにより、性別や国籍に関係のない純粋な業務評価となります。また、役員推薦等による選抜試験を実施し、合格者を管理職登用するなどスキルや意欲が反映される仕組みとしました。

さらに、将来の幹部候補となる若手を対象とした「若手人財育成塾」を開校。顧問税理士や他社の役員などを講師に迎え、中核社員・幹部に求められる仕事の考え方や、勉強の仕方などを月1回、1年間通して学んでいます。

日本語教育の様子

AIやイラスト・映像の活用で言語や慣習の壁を解決

多様な人財が活躍できる職場づくりに取り組む中での課題は、外国人財の言語・文化・慣習の壁でした。特に、慣習面では、こまめな手洗いやエアシャワーといった衛生面での基本的な行動が理解されにくかったのです。

そこで、ブイさんやAIに翻訳してもらった日本語の説明文を掲示。文字だけではなく、イラストやビデオを制作して説明するなどの工夫をしたことで、外国人からの理解を高めることができました。ほかにも、ブイさんはゴミの出し方など日常生活での相談にも乗っているそうです。

日本での生活ルールやマナーも教育します

今後はキャリアパスの可視化や海外の高度人財活用もめざす

今後の展望として、人事制度改革の継続とともに、従業員のモチベーションの向上を図っていきたいと言います。例えば、従業員が受けたい研修や通信教育のリクエスト制度、世代や属性に合う研修の実施など、自発的にリスキリングできる環境の整備などです。

さらに、20代・30代の若手でも能力次第で早期に管理職等に抜擢される”飛び級”のような制度や、定年制の延長によるシニア活用(シニアマイスター・シニアエキスパート)の制度も確立していきたいそうです。

若手中心の「委員会制度」「若手人財育成塾」実施や「飛び級制度」の確立をめざし、若手社員の活躍の場を広げる取組も行っています

西澤さん「ほかにもキャリアパスの可視化を考えています。様々なキャリア形成があることをイメージしやすくすることで、若手や外国人財が管理職をめざしやすくなったりして、モチベーションアップにつながっていけばと思っています。」

また西澤さんは、ベトナム人財の真摯な働きぶりが日本人の従業員にも良い影響を与えていると感じており、ベトナム人財の良い点として、仕事における積極性の高さを挙げます。ベトナムは経済発展が著しいため、仕事の様々なノウハウや知識を学びたいという姿勢が特徴的だそうです。

そんなベトナム人財のブイさんは、ベトナムからの高度人財の採用を増加させたいと考えています。ベトナムの大学にいる多くの優秀な学生を自社で積極的に採用・育成し、技術系やITに関連する分野などで活躍してほしいのだそう。続けてブイさんは、福山で働くことの良さや、働きやすさを教えてくれました。

ブイさん「備後漬物での仕事や生活を通して感じた福山の良さは“暮らしやすさ”です。福山市は東京や大阪のような都会ほど人や車、ビルなどが多くなく、自然が残っていて暮らしやすい。その“暮らしやすさ”が“働きやすさ”にもつながると思います。スーパーやコンビニなど、日常生活で必要な買い物ができる施設がたくさんあるのもポイントです。」

西澤さんは、食にまつわる事業環境は厳しい状況だと話します。そんな状況を乗り切るためには、様々な年齢・性別・国籍の従業員がそろう、多様性のある会社であることが重要とのことです。年齢や性別が違えば、考えや視点も異なります。また、海外向けの商品づくりでは、多様な国籍の方の意見が有用です。同社では、ダイバーシティを強みとして多彩な食文化に対応することで、事業の成長につなげていきたいと考えています。

西澤副社長と従業員の方々

外部と協力して技能実習生を受け入れ

ベトナム人技能実習生の受け入れで協同組合GLANZ(グランツ)と連携しています。また、外国人財への日本語教育において、外部の専門講師の協力を得ています。

西澤さん「弊社では人財育成のほかにも、設備投資や効率化などについて、国・県・市からいろいろな補助金をいただいておりまして、非常に感謝しています。補助金の肝は、それをいかに活用するかですね。」


※本記事内容は2025年3月取材時の情報です。