SDGsプロジェクト
ストーリー
観光と清掃活動を融合させ、楽しみながらゴミ問題の解決をめざす「エシカルツーリズム」


親子連れのリピーターが多いエシカルツーリズム
エシカルツーリズム推進協議会は福山市を拠点にした団体で、「エシカルツーリズム」の普及をめざしています。エシカルとは「倫理的」という意味で、エシカルツーリズムは「環境に配慮した旅」のことです。
代表を務める浜上 京大(はまがみ きょうた)さんは次のように語ります。
「エシカルツーリズム推進協議会では、2021年10月から観光と清掃活動を組み合わせたツアーを展開しています。2025年2月までに12回開催しています。開催頻度はおおむね年に3〜4回です」
1回目の開催では、7〜8人の参加でしたが、今では20〜25人に増加しました。最高で約50人も参加したことがあるそうです。参加者は親子連れなど、ファミリー層が多く、リピーターも増えています。福山市を中心に尾道・三原・府中、岡山・倉敷・井笠エリアなどの周辺地域からの参加も多いそうです。

参加者の多くはゴミ拾いを通じたコミュニティーを楽しむ
「開催して驚いたのが、想像以上にゴミ拾いに関心が高い方が多いことです。当初はバーベキューが目的での参加が多いのではないかと考えていたのですが、7割方の参加者はゴミ拾いが主目的でした。ゴミ拾いという共通の目的を持った人が集まることによって、ゴミ拾いを通じたコミュニティーを楽しんでいるようですね」
実際に参加者からは「ゴミ拾いの仲間ができて楽しかった」「エシカルツーリズムとは別に、ゴミ拾いを行った」などの声があるとのこと。エシカルツーリズム参加をきっかけに、独自でゴミ拾いグループを結成した人もいるそうです。
浜上さんはエシカルツーリズムを始めて、走島でゴミを捨てられることが減っていると感じています。

地球の恵みをいただく漁業に携わるからこそゴミ問題に危機感を抱く
浜上さんは走島で漁業・宿泊業を営んでおり、ゴミ問題を間近で見てきたことがエシカルツーリズムを始めたきっかけになっているといいます。
「走島でもけっこうゴミが捨てられていたり、海から流れて漂着していたりします。私は漁師でもありますが、網にかかるゴミの量の多さを目の当たりにしてきました。漁業は地球から恵みをいただいて成り立っている仕事です。おのずと『このゴミをなんとかしないといけないな』という気持ちが芽生えてきました」
しかし浜上さんは「ゴミを捨てるな」「ゴミを拾おう」と言うだけでは、解決は難しいと考えていました。そこで考えたのが、楽しみながらゴミを減らす方法。楽しむ要素が入ることで、積極的にゴミを減らす活動をするようになるのではないかと推測したのが理由です。思いついたのが、観光とゴミ拾いを組み合わせたツアー企画でした。
「通常、ゴミ拾いは無償のボランティア活動です。私たちがやっているエシカルツーリズムは、事業として参加者からお金をいただいた上で行うゴミ拾い。これは新しい形だと思いました」

ヨガやバーベキューのほか、ゴミを活用したアクセサリー・雑貨製作も
走島でのエシカルツーリズムの流れは、まずは走島への船で渡り、離島の時間をゆっくりと過ごします。その後、天女ヶ浜で早朝に捕れた新鮮な海鮮を、バーベキューで堪能。同時に参加者同士が交流し、仲を深め合います。
バーベキューのあとには、ヨガや瞑想を体験。ほかにも魚のさばき方教室を行ったこともあるそうです。その後、参加者みんなで走島の清掃活動を行います。
このほかにワークショップとして、拾ったシーグラスやペットボトル・プラスチックなどを使ったアクセサリー・雑貨づくりも行い、こどもに好評です。
「シーグラスとは海を漂うガラスの破片が、次第に角が取れていったもの。ゴミなんですけど、洗うと見た目がきれいなんですね。ゴミを拾うだけでなく、使い道があるものは活用するという考えを知ってほしいです」
さらには神奈川県にあるアクセサリー・雑貨の専門事業者とも連携し、ゴミや漁業で不要となった網・ロープを使った商品を製作しています。

山間部など市内の他地域に舞台を移しての開催も視野に
エシカルツーリズムの強みとして浜上さんは、リピーターが多いため、島の関係人口が増える点がポイントだといいます。
「また、食育としての意味も大きいのではないでしょうか。というのも、今のお子様は食の裏側を知らないことが多いと聞きます。食の裏側の一つにゴミ問題があり、ゴミ問題はやがて食へも影響してくることを学べば、将来のゴミ問題の解決につながるかもしれません」
浜上さんは今後の展望として、走島だけでなく山間部など市内の他の地域に舞台を移してエシカルツーリズムを開始したいそうです。
「地域によってそれぞれ悩みがあると思いますので、解決に向けて協力できないかなと。ほかに課題としてSDGs、あるいは海洋ごみの問題の解決策として、もっとインパクトあることができないかなと考えています」と浜上さんは意気込みます。
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