PROJECT STORY

SDGsプロジェクト
ストーリー

HOME SDGsプロジェクトストーリー CO2排出量を30%削減したエフピコの食品トレー・ 透明容器の「循環型リサイクル」の取り組み
2024.03.29

CO2排出量を30%削減したエフピコの食品トレー・ 透明容器の「循環型リサイクル」の取り組み

消費者・スーパーマーケット等・包材問屋・エフピコの「4者一体」 で行うリサイクル

【リサイクルの図】

株式会社エフピコ(以下「エフピコ」)は、福山市に本拠を構える企業です。1962年7月に「福山パール紙工株式会社」として設立され、1989年1月より現在の社名になりました。従業員数は、2023年3月時点で約970人、グループ会社全体で約4,800人に上ります。エフピコの主な事業内容は、食品トレーの製造・販売です。食品トレーのシェアは約30%を占め、業界で1位。スーパーマーケットやコンビニエンスストアの弁当・惣菜などの食品容器の、3つに1つがエフピコの食品容器なのです。

そんなエフピコでは使用済みの食品トレーや透明容器・ペットボトルを回収し、それらを再び食品トレーや透明容器に生まれ変わらせる独自の「循環型リサイクル」の取り組みを行っています。この循環型リサイクルの取り組みは、「トレーtoトレーⓇ」「ボトルto透明容器™」と呼ばれています。

【リサイクルの図】

店頭で回収された使用済み食品トレーを再び食品トレーに生まれ変わらせることを「トレーtoトレーⓇ」。店頭で回収された使用済みのペットボトルを新たな透明容器に生まれ変わらせることを「ボトルto透明容器™」といいます。また、使用済み食品トレーから再び生まれ変わらせた食品トレーは「エコトレーⓇ」使用済みペットボトルから生まれ変わらせた新たな透明容器を「エコAPETⓇ」「エコOPETⓇ」といいます。

エフピコの冨樫英治(とがしえいじ)さんは「エフピコの循環型リサイクルは消費者や販売者・配送者、そして生産者という4者が協力して成り立つ取り組みです。まさに『4者一体』となって行われているのです」と話します。

トレーtoトレー®やボトルto透明容器™の仕組みは、消費者は使い終わった食品トレー等を洗浄・乾燥し、店頭の回収ボックスへ投入します。回収されたトレー等は、包材問屋が製品の納品の帰りに引き取り、一時保管。そして生産者であるエフピコが包材問屋へ製品を配送した帰りの便で、自社へ持ち帰るというもの。持ち帰った使用済みの食品トレー等は、再び原料となって、新たなトレーや透明容器に生まれ変わるのです。

1990年より始まった食品トレーリサイクル

エフピコの循環型リサイクルの取り組みが始まったのは、なんと1990年から。SDGsが国際連合総会で採択された2015年の、25年も前です。エフピコがリサイクルに取り組むことになった経緯について、次のように語りました。

「背景としては、1980年代よりごみ問題が社会の大きな課題となっていたことがあります。家庭ごみや企業からの産業廃棄物が大量に出て、最終処分場が逼迫していたのです。とくに広島県は『ごみ戦争』といわれるほどでした。社会全体でごみ自体を減らしていく必要があるという認識が広がる中、私たちが製造する食品トレーや容器は問題視されました。大量に生産し、なおかつ使い捨てになっていたからです」

「私たちは『このままでは、食品トレー製造の事業が成り立たなくなる恐れがある』という危機感を覚えたのです。そして事業を守るために、自主的に循環型リサイクルの取り組みを始めたのです」

循環型リサイクルの取り組みを始めた当初は、同業者からは「使用済み食品トレーを集めて、どうするんだ?」「あんなことをやっていては、エフピコは潰れてしまう」など、誹謗中傷があったそうです。やがて通称「容器包装リサイクル法(以下「容リ法」)」と呼ばれる法律の施行などにより、事業者が再商品化(リサイクル)する義務ができ、同業他社もリサイクル義務を果たしていくことになります。

当初はポイント制の導入などでリサイクルの定着を図る

【エコトレー】

食品トレーのリサイクルに理解を得るのに苦労したのは、同業者だけではありません。4者一体のリサイクルですので、消費者やスーパーマーケット、包材問屋の理解を得るのも大変でした。そこでエフピコは、さまざまなアイデアでリサイクルの定着を図ります。

冨樫さん「当初、回収する使用済み食品トレーをどのように説明するかに苦労しました。白い発泡スチロール製のトレーを回収対象としていたのですが、間違いやすいのが豆腐などに使われる白い容器は素材が違うため回収対象となりません。この違いの説明の仕方は、かなり悩みましたね。結果として、爪楊枝が簡単に刺さるという方法を思いつきました。消費者の方に爪楊枝が刺さるトレーを回収し、刺さらないトレーは自治体の資源ごみ収集へという説明をしたんです」

さらに「リサイクルの取り組み自体がなかなか広がらず、大変でした。また回収ボックスに持ってきていただいても、トレーを洗っていないなど、手順が守られていないことも多かったんです。いかにして消費者の方々へ正しいリサイクルを浸透させるかが、課題となりました。そこで出たアイデアが、ポイント制度だったのです」と、冨樫さん。

【エコAPET】

「ポイント制度は、スーパーのサービスカウンターに使用済み食品トレーを持ってきてもらい、洗浄など正しく行われているかを店員がチェック。そして一定数のトレーを持ってきたらポイントを付け、ポイントが貯まったらそのお店で使える商品券を発行するシステムです。これは効果的でした。これはスーパーとしても、集客やリピーターの増加に大きな効果があります。そうなるとほかのスーパーもトレーの回収ボックスの設置を考えるようになり、リサイクルの定着が加速しました」と、冨樫さんは振り返りました。なおリサイクルの定着とともに、ポイント制度は役目を終えています。

「また当時、牛乳パックの回収を推進する市民団体にお声がけし、食品トレーの回収も一緒に推進してもらったのです。市民団体からの呼びかけは非常に大きな影響があり、トレーの回収が広がっていきました」と冨樫さん。トレーの循環型リサイクル開始当初の回収拠点は福山市・大阪市のスーパー6店舗からでした。2023年には回収拠点が、全国で約10,600拠点にも増加しています。

いっぽう包材問屋は生産者であるエフピコ同様にごみ問題に危機感を持っており、リサイクルに協力的だったとのこと。包材問屋は納品の帰りの便で回収したトレーを持ち帰るため、配送コストの負担が少なかったことも大きかったそうです。

循環型リサイクルによりトレー製造時におけるCO2排出削減が30%

【リサイクル工場の様子】

エフピコが行う食品トレーや透明容器などの循環型リサイクルは、地球環境への負荷削減に効果を発揮しています。「食品トレーや透明容器の循環型リサイクルは、原油からトレーや透明容器を製造した場合と比べると、二酸化炭素(CO2)の排出量を約30%減少できました。さらに2024年3月には、関西エリアの太陽光発電により再生可能エネルギー調達を開始することで、CO2排出削減量が37%に拡大します」と冨樫さん。

トレーの場合は原油からいくつかの工程を経て、ポリスチレンというトレーの原料になります。またPET製容器の場合も原油からいくつかの工程を経て、PET樹脂という原料になります。循環型リサイクルを行えば、原油から原料を製造するまでの工程を省くことが出来るのです。そのため、二酸化炭素排出量の削減に大きな効果があるのです。

【製造工程】

冨樫さん「リサイクルを開始した当初はリサイクルした食品トレーや透明容器は、石油由来の原料を使ったものより少し価格が高かったのですが、現在はリサイクル材のものもバージン原料のものもほぼ同じ価格です。使用されるスーパーさんなどの小売店は、ほぼ同じ価格なら環境負荷の少ないリサイクルの食品トレーや透明容器を選ばれるようになりました。新しい石油由来の原料からリサイクル原料を使用した食品トレーや透明容器に変えるだけで二酸化炭素排出量の削減できるのですから、小売店にとってのメリットはとても大きいと思います」。

また消費者の意識の変化も、大きな効果だそうです。冨樫さんによれば「製品エコ化率(自社における全製品出荷量に対する、リサイクル製品の出荷量が占める割合)は約46%です。エフピコの循環型リサイクルは「4者一体」で行うので、リサイクルの食品トレーや透明容器を増やすためには消費者の皆様に使用済みトレー・透明容器などの回収にご協力いただく必要があります。エコトレーⓇやエコAPETⓇ、エコOPETⓇの増加は、消費者の環境意識の向上が背景にあるといえるでしょう」とのことです。

リサイクルを通じ、環境意識の高い企業として認知が向上

【回収ボックスの様子】

冨樫さんは「ご家庭で出た資源ごみは、ご自宅近くの自治体のごみ収集所に持っていきますが、私たちのリサイクルはスーパーの店頭へ持っていく手間がかかります。しかし現在はマイバッグが普及しておりますので、スーパーに買い物へ行くときにマイバッグに使用済み食品トレーを入れて店頭の回収ボックスに出し、そのままスーパーで買い物をされ、そのマイバックで購入した食品を持ち帰るのです。これは非常に効率的ですよね」と話します。リサイクル増加のさらなる追い風になっていると感じているとのことです。

またエフピコでは、希望者に対して全国9箇所のリサイクルセンターや選別センターでの工場見学(約60分)を受け入れています。「エフピコの循環型リサイクルは、食品トレーや透明容器が再び食品トレーや透明容器によみがえるというように、リサイクルの用途が食品容器と決まっています。しかし消費者の方々はスーパーマーケット持ち込んだ使用済み食品トレーがどうなっているのか、回収されたあとを確認する術がありません。本当に食品トレーとしてリサイクルしているのか?という不安を払拭するために、工場見学を始めたのです。また小・中学校への出前授業なども行っています」と冨樫さん。

なおリサイクルによって使用済み食品トレーから生まれたリサイクル食品トレーは、表面や裏面に「エコマーク(リサイクルマーク)」が付けられています。消費者は目視によって、リサイクルトレーかどうかが分かるようになっているのです。

さらにエフピコでは新卒採用の際、環境意識の高い学生が多く採用試験を受けるようになったとのこと。冨樫さんは「当初は自らの事業を守るために始めた食品トレーの循環型リサイクルですが、しだいに環境負荷の軽減のために行うよう意識が変わっていったのです。そして食品トレーの循環型リサイクルの取り組みを通じ、エフピコという企業は環境意識の高い企業として認知されるようになりました。そのため環境意識の高い学生が、希望の就職先のひとつとして弊社を選ぶようになったのだと思います」と話します。

循環型リサイクルのさらなる拡充を目指す

エコトレーⓇやエコAPETⓇ、エコOPETⓇの使用を希望する企業様は、年々増加しています。いっぽう製品エコ化率は約46%で、まだまだ原料となる使用済み食品トレー・透明容器・ペットボトルが足りないと感じているそうです。「消費者の方々の環境意識の高まりは感じていますが、まだまだ使用済み食品トレー・透明容器・ペットボトルの回収は必要です」と冨樫さんは話します。

冨樫さん「弊社ではSDGsの目標のうち、12番『つくる責任、つかう責任』に関わる活動に注目しています。弊社はメーカーなので当然『つくる責任』は負っています。同時に『つかう責任』も非常に重要です。つまり弊社の製品を直接使用するスーパーなどの小売店、そして小売店で弊社の製品を使用した商品を購入する消費者の方々も、『つかう責任』ということで同じように選択の責任を負っています。ですからみんなで『4者一体』となって、弊社の循環型リサイクルにより一層のご協力をいただければと思います」

「食品トレー・透明容器の循環型リサイクルは、今後弊社の事業活動を持続していくためには必須の取り組みです。回収率の拡大、そしてご協力していただける消費者増加への働きかけは、弊社にとって重要な活動と思っています」と冨樫さんは語りました。エフピコの循環型リサイクルの、さらなる拡大に期待をしたいと思います。

株式会社エフピコ

WEBサイトアイコンWEBサイト
SDGsプロジェクトストーリー
一覧へ戻る